これは国立音楽大学附属図書館が所蔵するベートーヴェンの初期印刷楽譜のコレクション1303点を対象とした目録である。

　当コレクションは、図書館が元々持っていたものに加えて、1983年に世界的ベートーヴェン研究者であった故児島新先生より寄贈された楽譜、それに1989年から数年にわたってドイツの古書店数社から買い入れた多数の初期楽譜から成る。当コレクションはその量、質からみてドイツのボンにあるベートーヴェン・アルヒーフ、オーストリアのウィーンにあるオーストリア国立図書館中のホボケン・コレクションに続くものと考えてよいだろう。

　基本は1794年から1900年までの出版物だが、若干1900年以降の年代の資料と、何点かの筆写譜が含まれる。ベートーヴェン存命中の楽譜は500点ほどである。全資料のうち原版譜は107点だが、他に再版（楽譜部分は変えずにタイトル部分だけを変えた再発行）、後続版（原版譜とは別の出版社から出た版）、多くの編曲版を有する。

　コレクションは明確な方針のもとに集められたものではない。したがって重複も多々あるが、細かく検証すると記入や状態が異なっていることが多い。これらの性質をかんがみて、当目録では資料一点ごとの特徴を正確に伝えることを主目標におき、タイトルページ以外の場所に見られる記述やタイトルページの色や飾り、紙質や透かしまで詳細に記録した。ただし、このような細かな記述は1830年以前の楽譜に限ってある。原版譜やその再版、および重要な後続版はほとんど1830年までに出版されているからである。しかしこれ以降の楽譜についても、年代推定や他の資料との比較に必要な場合は掲載した。