資料紹介
文献・楽譜・録音
近年、ベートーヴェン関連のアウトプットには目覚しいものがあります。これは一時、停滞ぎみであるとみられていたベートーヴェン研究が、急速に活性化してきていることの反映にほかなりません。 最も活発な進展がみられるのは、原資料に関する研究であろうと思われます。自筆の楽譜やスケッチといった音楽資料、あるいは手紙・日記・筆談帳など文字資料に関する再調査とその成果をふまえた校訂出版です。原資料はあらゆる研究の基盤でありますから、伝記研究や受容史研究はいうまでもなく、作品研究、さらに演奏もここから大きい刺激を受けることになりました。 このコーナーでは、さまざまな資料を3つの扉からご紹介いたします。各扉とも比較的近年のものを中心にとりあげてまいりますが、古典的とされるベートーヴェン文献にもふれてゆく予定です。“いまの時代のベートーヴェン”をごいっしょに探ってまいりましょう。 1.文献[書籍・雑誌・論文]
1990年以降、ベートーヴェン研究は、資料研究と受容史研究を中心に新たな進展をみせています。その主な理由としては、原資料へのアプローチが容易になってきたことがあげられるでしょう。これによってドイツ語圏以外、とりわけ英語圏からの研究が活発になり、従来みられなかった多様な視点が導入されるようになりました。ドイツ・オーストリアにおけるベートーヴェン研究の展開は、そうした動きに刺激をうけているところもあります。ここでは、新しいベートーヴェン研究の動向をご紹介する意味で、1990年以降出版のものを中心に、欧文文献・日本語文献をとりまぜてすすめてまいります。簡便なガイドの意味で、【 】に内容について見出しを示しておきます。(注解:藤本一子)
【書簡】(ドイツ語)
Hrsg.von Sieghard Brandenburg.Beethoven.Briefe.Band1-7.Henle,Munchen 1996-98(ブランデンブルク編;ベートーヴェン書簡集1−7.)
【作品解説事典】(ドイツ語)
Hrsg. von Riethmulle / Dahlhaus / Ringer. Beethoven Interpretationen seiner Werke. 2 Bande.Laaber 1994/1996(2).(リートミュラー/ダールハウス/リンガー共編;『ベートーヴェン.作品解釈集』2巻)
【文献】(ドイツ語/日本語訳)
テオドール・W・アドルノ 『ベートーヴェン──音楽の哲学』(大久保健治訳)1997年 作品社
【人と作品】(ドイツ語)
Konrad Kunster; Beethoven. Deutsche Verlag-Anstalt. 1994(コンラート・キュスター著;ベートーヴェン)
【伝記関連】(ドイツ語)
Beethoven im Herzen Europas. Hrsg. von Kuthen, Prag 2000(キューテンほか編;中欧ヨーロッパのベートーヴェン)
2.楽譜[新刊楽譜・新ベートーヴェン全集]
近年の資料研究の活性化にともない、ベートーヴェンの楽譜刊行にも新しい波がおこっているように思われます。このコーナーでは、めずらしい楽譜、そして、ゆきとどいた「校訂」をへた楽譜を、さまざまなジャンルにわたって紹介したいと考えています。
(1)自筆楽譜のファクシミリ[写真複製]、初版やこれに類する古い楽譜の復刻版、新しいスケッチ類の刊行、あまり知られていない作品など。あるいはまた、よく知られている作品の、新校訂による楽譜などをとりあげます。 (2)ボンのベートーヴェン・アルヒーフを母体に編纂されている『新ベートーヴェン全集』を、順次ご紹介します。 (注解:藤本一子) 【新刊楽譜】
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